【徹底解説】ラップ名曲パンチラインの意味に学ぶ英語vol.6「OutKast編」

microphone stand

アメリカのラップミュージックを聴き始めてもうかれこれ20年くらいになる。

昔のものからわりと最近のものまでいろいろ聴いているが、いまだにストレートで強烈なメッセージやユニークでウィットに富んだリリック(歌詞)を見つける度に1人でニヤリとしたり、何度も頷いたりしている。

このシリーズでは、普段ラップをあまり聞かない人がラップミュージックの魅力に気づいてくれたり、また自分のようにラップのリリックから英語に興味を持ってくれる人がいたら嬉しい、という思いから、ヒップホップ界のレジェンドや、今アツいアーティストたちのリリックの中から、「これはやられたっ!」と思わず唸ってしまうようなエッジが効いてオリジナリティが溢れるパンチラインを紹介していこうと思う。

それじゃ、早速今日のエントリ―を見ていこう―――。

ラップ名曲パンチライン

Now throw your hands in the air, and wave ‘em like you just don’t care. And if you like fish and grits and all that pimp shit, everybody let me hear you say “O-Yea-yer”

-OutKast, “ATLiens” (1996)

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パンチライン徹底解説

今日のポイント
  • “throw your hands in the air”という表現
  • アメリカ南部の文化

こちらのパンチラインは、1996年にリリースされたOutKast“ATLiens”というアルバムの同名曲のフック(サビ)の部分からです。

OutKastといえば、アトランタ州ジョージア出身のAndré 3000Big Boiの二人から成るラップデュオで、Hip Hop通でなくても音楽好きであればもはや知らない人はいないというくらい世界的に知名度の高いアーティストです。

これまで6枚のスタジオアルバムをリリースしていて、どれも名作ばかり(個人的には最初の3作が超名盤!)ですが、今回は彼らの2ndアルバム“ATLiens”からの一節です。

ちなみに“ATL”というのはアトランタの頭文字で、それと“alien”「エーリアン」(異国の地から来たもの)とをかけていて、自分たちを「アトランタという聞いたことのない場所から来た奴ら」というような位置づけで捉えていることがわかります。

Hip Hopは元々ニューヨークで誕生し、そこから西海岸へ渡りましたが、この頃南部のHip Hop(ジョージア州は東海岸に面していますが、「南部」に属してます)なんて全然注目されていなかったので、こんなタイトルをつけたんですね。

ヒップホップは東海岸生まれなんですね

はい、ということで前置きはこれくらいにして、今回はちょっと長いので内容を以下の通り前半と中盤と後半の3つのパートに分けて見てみましょう。

  1. 前半:”Now throw your hands in the air, and wave ‘em like you just don’t care”
  2. 中盤:”And if you like fish and grits and all that pimp shit”
  3. 後半:”everybody let me hear you say “O-Yea-yer”

“Now throw your hands in the air, and wave ‘em like you just don’t care”

ではまず前半部分について解説していきましょう。

“throw your hands in the air”ですが、これは多分見たことある人もいるだろう超お決まりのフレーズで、今や日本のアーティスト達も曲やライブパフォーマンスの中で、よく使っているのでもはや説明不要ですが、「両手を宙に上げて」という意味になりますね。

CHECK!

「両手を宙に上げて」というフレーズ>

  • “put your hands up”
  • “throw your hands up”
  • “put your hands in the air”
  • “throw your hands in the air”

などのフレーズはあなたもきっと一度はどこかで聞いたことがあるはずです。

MEMO

“put”「置く」よりも“throw”「投げる」を使った方がより「勢いよく両手を宙に放り出す」というイメージが出ますね。

次の“wave ‘em”ですが、”em”は“them”の省略で、ここでは“hands”「両手」のことを指しているので「手を振る」という意味になります。

そして“like you just don’t care”の”like”は「~のように」なので、「”you don’t care” のように」、つまり「お構いなしに」という具合になります。

ということで前半は「両手を宙に投げ出して、なりふり構わず振り回せ」と大体こんな感じでオッケーです。

“And if you like fish and grits and all that pimp shit”

そしたら次は中盤部分を見てみましょう。

“If you like”は「もしあなたが好きなら」ですね。何を好きなのかというと、

  1. “fish and grits”
  2. “all that pimp shit”

ということです。正直どちらもちょっとよくわかりませんね。

はい。実はこの部分にアメリカ南部の特徴がぎっしりと詰まっているので細かく見ていきましょう。

“fish and grits”

まず“grits”というのはアメリカ南部の代表的な食べ物のことです。それ自体はひいて粉にしたトウモロコシのお粥みたいなシンプルなものなんですが、これが結構人によって好き嫌いが別れたりします。

また”grits”にはいろんな食べ方があって、例えばシンプルに砂糖やシロップをかけて食べたり、チーズを入れてみたり、と一緒に食べたりとその食べ方は家庭や個人の好みによってさまざまです。

さらにいくつか代表的な料理もあって、その1つが“shrimp and grits”という、炒めたエビをグリッツに乗せた料理もあります。

そしてもう一つの代表的な例がこの“fish and grits”というもので、その名の通り魚のフライをグリッツに乗せたもので、これがいわゆるサウスの代名詞、「ソウルフード」なんですね。

fish and grits

画像引用

これですか。美味そう・・・ではないですね笑

“all the pimp shit”

そしたら今度はもう一つの“all that pimp shit”についてですが、“pimp”は辞書を引くと「売春あっせん業」とか「ポン引き」とか古臭い表現が載っていると思います。

が、ここで言う”pimp”とは、「キラッキラのジュエリーをつけ、フワッフワのファーコートをまとい、ピカッピカの車に乗ってるような超イケてるスタイルの男たち」のことを指しています。

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(まさにイメージにぴったりなラッパー “Pimp C”(故)のアルバムカバーから)

中には「ラッパー=こんな感じの人」を連想する人も多いかもしれませんが、別にラップをしている人が全員こんなド派手な格好をしているわけではありませんよね。

その逆もまたしかりで「”pimp”=全員ラッパー」というわけでももちろんありません。

また”pimp”というのは南部に限らずどこにでもいて、その言葉から連想される現代のイメージはあくまでも「金持ちで、ド派手な格好をして常に女の匂いがする奴」という感じです。(金持ちになる方法が薬物取引や売春元締めというケースは結構ありますが)

ただ、サウス(アメリカ南部)のヒップホップ文化の特徴の1つとしてこの“pimp”スタイルが非常に深く根付いている、ということは言えると思います。

この辺りは奴隷制度時代の影響なども絡みついてきてかなりディープなところですが、一般的にサウスでは「富=パワー」という思想が強く残っているため、このような派手なスタイルが憧れの的になる文化は現在でも色濃く残っています。

CHECK!

アメリカ南部の文化

  • 奴隷制度の影響が色濃く残るアメリカ南部では「富=パワー」という考えが浸透しているため、食事は“grits”などシンプルなものも多い一方で“pimp”スタイルに代表されるド派手な装飾が今でも随所で見られる
とにかく目立ちたがりなんですね笑

ちなみに”shit”は本来「くそ」という意味ですが、スラングでは「もの」くらいの感じでいいでしょう。

なので“all that pimp shit”で、そういう南部の特徴を表しているキラッキラのかっこいいスタイル全部をひっくるめて「イケてるもの」という感じにしてみましょう。

(ちなみに英語でおしゃれに「かっこいい/イケてる」と言いたい時に使える表現はこちらの記事でまとめているので是非チェックしてみてください)

hot car日常会話でよく耳にする「かっこいい/イケてる」の英語スラング25選

ということでこの中盤部分をまとめると、「もしおれたちのサウスを代表する”fish and grits”やイケてる”pimp”スタイルが好きなら」という感じに仕上がります。

そして、「好きなやつは~」以降が後半パートへと続いていきます。

“everybody let me hear you say “O-Yea-yer”

さあ最後は後半部分ですが、ここは簡単ですね。

“everybody”「みんな」、”let me hear you say”「おまえが言うのを聞かせてくれ」で、何て言うかというと、”O-Yea-yer”「オーイェイヨー」です。

なので「みんなオーイェイヨーと言ってくれ」くらいの感じでいいでしょう。

まとめ

ということで、ここまでを繋げてみると、

  1. 「両手を宙に投げ出してお構いなしに振ってくれ」
  2. 「もしおれたちのサウスを代表する”fish and grits”やイケてる”pimp”スタイルが好きなら」
  3. 「みんなオーイェイヨーと言ってくれ」

となるので、わかりやすくすると、

Now throw your hands in the air, and wave ‘em like you just don’t care. And if you like fish and grits and all that pimp shit, everybody let me hear you say “O-Yea-yer”

 

「さあ両手を宙に投げ出して、なりふり構わず振り乱せ。もしフィッシュアンドグリッツやその他イケてるものが好きなら、みんな「オーイェイヨー」って言ってくれ」

という感じになります。うーん、いいですねぇ。

ちなみに、実際に曲を聞いてみると、“air”(エアー)の部分は「えぃよー」“care”「けぃよー」、最後は“O-Yea-yer”「オーイェイヨー」という風に韻を踏んでいるのがわかります。(↓で聴けます)

この特徴的な発音とユニークなリズム、そして、“fish and grits”や”pimp”などサウスならではのものを織り交ぜて生み出される独特なグルーヴこそが、“Southern Hip Hop”の醍醐味だと僕は思います。

不思議なもので、こういう曲を聴く度に、うだるように暑いアメリカ南部の土埃にまみれた小さな街で夜な夜な近所のさびれた倉庫みたいなクラブで汗だくになりながら踊っている情景が頭に浮かび、思わず家の部屋の窓を開け外の通りに向かって、

オーイェイヨー!!

と叫んでしまいます。

・・・南部には行ったことないんですけどね。何ででしょう笑

夜たまに聞こえてくるアレはみんなサウスのラップを聴いてたんですね。今わかりました

曲はこちらで聞けるのでよかったらチェックしてみてください(該当部分は1:05辺りからです)

ちなみに、この“ATLiens”という2ndアルバムは、OutKastの1stアルバム“Southernplayalisticadillacmuzik”や3rdアルバム“Aquemini”などと並んでOutKastの「初期の三大傑作」と言われている作品です。これを機にラップに興味を持った人や、僕のように「洋楽を聞きながら楽しく英語を勉強をしたい!」と思った人は是非チェックしてみてくださいね。


はい。ということで、今回の「ラップ名曲パンチラインに学ぶ英語特集」はいかがだったでしょうか?これからも素晴らしきラップミュージックの魅力をお届けすると共に、あなたの英語学習の助けになれれば光栄です。

前のエピソードや次のエピソードも気になる!という方はそれぞれこちらからどうぞ。

<前のエピソード>

sampling【徹底解説】ラップ名曲パンチラインの意味に学ぶ英語vol.5「GLC編」

<次のエピソード>

turntable【徹底解説】ラップ名曲パンチラインの意味に学ぶ英語vol.7「Phife Dawg編」

また、第1回から見てみたい!という方がいましたらこちらからチェックしてみてください。 

cassette 【徹底解説】ラップ名曲パンチラインの意味に学ぶ英語vol.1

それではまた!