【徹底解説】ラップ名曲パンチラインに学ぶ英語Vol.6

microphone stand

アメリカのラップミュージックを聴き始めてもうかれこれ20年くらいになる。

昔のものからわりと最近のものまでいろいろ聴いているが、いまだにストレートで強烈なメッセージやユニークでウィットに富んだリリック(歌詞)を見つける度に1人でニヤリとしたり、何度も頷いたりしている。

このコラムでは、最近ラップを聞き始めた人がラップミュージックの魅力に気づいてくれたり、また自分のようにラップのリリックから英語に興味を持ってくれる人がいたら嬉しい、という思いから、ヒップホップ界の先駆者たちや、わりと最近のアーティストのリリックの中から、「これはやられたっ!」と思わず唸ってしまうようなエッジが効いてオリジナリティが溢れるパンチラインを紹介していこうと思う。

それじゃ、早速今日のエントリ―を見ていこう。

名曲パンチラインはコレ

Now throw your hands in the air, and wave ‘em like you just don’t care. And if you like fish and grits and all that pimp shit, everybody let me hear you say “O-Yea-yer”

(訳:さあ両手を宙に投げ出して、なりふり構わず振り乱せ。もしフィッシュアンドグリッツやその他イケてるものが好きなら、みんな「オーイェイヨー」って言ってくれ)

-OutKast, “ATLiens” (1996)

f:id:bigtree1000:20180421192045j:plain

徹底解説

こちらのパンチラインは、1996年にリリースされたOutKastの “ATLiens” というアルバムの同名曲のフック(サビ)の部分から。

MEMO

OutKastといえば、アトランタ州ジョージア出身のAndré 3000とBig Boiの二人から成るラップデュオで、Hip Hop通でなくても音楽好きであればもはや知らない人はいないというくらい世界的に知名度の高いアーティストです。

これまで6枚のスタジオアルバムをリリースしていて、どれも名作ばかり(個人的には最初の3作が超名盤!)ですが、今回は彼らの2ndアルバム “ATLiens” からの一節です。

ちなみに “ATL” というのはアトランタの頭文字で、それと “alien”「エーリアン」(異国の地から来たもの)とをかけていて、自分たちを「アトランタという聞いたことのない場所から来た奴ら」というような位置づけで捉えていることがわかります。Hip Hopは元々ニューヨークで誕生し、そこから西海岸へ渡りましたが、この頃南部のHip Hop(ジョージア州は東海岸に面していますが、「南部」に属してます)なんて全然注目されていなかったので、こんなタイトルをつけたんですね。

はい、そしたら今回はちょっと長いので、内容を前半と中盤と後半の3つのパートに分けて見てみましょう。

  1. “Now throw your hands in the air, and wave ‘em like you just don’t care”
  2. “And if you like fish and grits and all that pimp shit”
  3. “everybody let me hear you say “O-Yea-yer”

まずは前半部分

まずは最初の “Now throw your hands in the air, and wave ‘em like you just don’t care” の部分について解説していきましょう。

これは多分見たことある人もいるだろう超お決まりのフレーズで、今や日本のアーティスト達も、

 

  • “put your hands up”
  • “throw your hands up”
  • “put your hands in the air”
  • “throw your hands in the air”

などの形でよく使っているのでもはや説明不要ですが、「両手を宙に上げて」という意味ですね。

ココ重要

“throw”=「投げる」を使った方がより「勢いよく両手を宙に放り出す」というイメージが出ますね。

次の “wave ‘em” ですが、”‘em” は “them” の省略で、ここでは “hands”「両手」のことを指しているので「手を振る」という意味。

“like you just don’t care” の “like” は「~のように」なので、「”you don’t care” のように」、つまり「お構いなしに」という具合になります。

前半は大体こんな感じでオッケーです。

この”put your hands in the air”ってホントにジャンルを問わずいろんなところで聞きますよね

次は中盤

そしたら次は、”And if you like fish and grits and all that pimp shit” を見てみましょう。

“If you like” は「もしあなたが好きなら」ですね。何を好きなのかというと、

  1. “fish and grits”
  2. “all that pimp shit”

ということです。正直どちらもちょっとよくわかりませんね。

はい。実はこの部分にアメリカ南部の特徴がぎっしりと詰まっているので細かく見ていきましょう。

“fish and grits”

まず “grits” というのはアメリカ南部の代表的な食べ物のことです。それ自体はひいて粉にしたトウモロコシをお粥みたいにしたシンプルなものなんですが、人によって結構好き嫌いが別れたりします。

この “grits” にはいろんな食べ方があって、例えばシンプルに砂糖やシロップをかけて食べたり、チーズを入れてみたり、卵と一緒に食べたり。

またいくつか代表的な料理もあって、その1つが “shrimp and grits” という、炒めたエビをグリッツに乗せた料理もあります。

そしてもう一つの代表的な例がこの”fish and grits”というもので、その名の通り魚のフライをグリッツに乗せたもの。これがいわゆるサウスの代名詞、ソウルフードなんですね。

fish and grits

画像引用

美味そう・・・ではないですね笑

“all the pimp shit”

そしたら次は “all that pimp shit” についてですが、”pimp” は辞書を引くと「売春あっせん業」とか「ポン引き」とか古臭い表現が載っていると思います。

が、ここで言う”pimp”とは、キラッキラのジュエリーをつけ、フワッフワのファーコートをまとい、ピッカピカの車に乗ってるような超イケてるスタイルの男たちのことをさしています。

f:id:bigtree1000:20180421190403j:plain

(写真はまさにイメージにぴったりなラッパー “Pimp C”(故)のアルバムカバーから)

中には「ラッパー=こんな感じの人」を連想する人も多いかもしれませんが、別にラップをしている人が全員こんなド派手な格好をしているわけではありませんよね。また逆に「”pimp”=全員ラッパー」というわけでももちろんありません。”pimp”というのは南部に限らずどこにでもいて、その定義はあくまでも「金持ちで、ド派手な格好をして常に女の匂いがする奴」というイメージです。(金持ちになる方法が薬物取引や売春元締めというケースは結構ありますが)

ただ、サウス(アメリカ南部)のヒップホップ文化の特徴の1つとしてこの”pimp”スタイルが非常に深く根付いている、ということは言えると思います。

とにかく南部の人(ラッパー)は目立ちたがり。この辺は奴隷制度時代の影響なんかも絡みついてきて非常にディープなところですが、一般的にサウスでは「富=パワー」というイメージが強く残っているような気がします。

また次の”shit” は本来「くそ」という意味ですが、ここではあえて訳すとすれば「もの」くらいの感じです。

なので “all that pimp shit” で、そういう南部の特徴を表しているキラッキラのスタイル全部をひっくるめて「イケてるもの」という風に訳しました。

(ちなみに英語でおしゃれに「イケてる」と言いたい時に使える表現はこちらの記事でまとめているので是非チェックしてみてください)

hot car アメリカ発!「イケてる」という意味のかっこいいスラングまとめ5選

なのでこの部分をまとめると、「もしおれたちのサウスを代表する “fish and grits” やイケてる “pimp” スタイルが好きなら」という感じに仕上がります。そして、「好きなやつは~」以降の説明がその後に続いています。

最後に後半部分

そして最後に”everybody let me hear you say “O-Yea-yer”の部分ですが、ここは簡単ですね。

“everybody”「みんな」、”let me hear you say”「おまえが言うのを聞かせてくれ」で、何て言うかというと、”O-Yea-yer”「オーイェイヨー」です。

まとめ

ということで、ここまでを繋げてみると、

  1. 「両手を宙に投げ出してお構いなしに振ってくれ」
  2. 「もしおれたちのサウスを代表する “fish and grits” やイケてる “pimp” スタイルが好きなら」
  3. 「みんなオーイェイヨーと言ってくれ」

となるので、わかりやすくすると、

ココ重要

「さあ両手を宙に投げ出して、なりふり構わず振り乱せ。もしフィッシュアンドグリッツやその他イケてるものが好きなら、みんな「オーイェイヨー」って言ってくれ」

という感じになります。うーん、いいですねぇ。

 

ちなみに、実際に曲を聞いてみると、”air”(エアー)の部分は「えぃよー」、”care” は「けぃよー」、最後は “O-Yea-yer”「オーイェイヨー」という風に韻を踏んでいるのがわかりますね。

この特徴的な発音とユニークなリズム、そして、”fish and grits” や “pimp” などサウスならではのものを織り交ぜて生み出される独特なグルーヴこそが、”Southern Hip Hop” の醍醐味だと自分は思います。

不思議なもので、こういう曲を聴く度に、うだるように暑いアメリカ南部の土埃にまみれた小さな街で夜な夜な近所のさびれた倉庫みたいなクラブで汗だくになりながら踊っている情景が頭に浮かび、思わず家の部屋の窓を開け外の通りに向かって、

オーイェイヨー!!

と叫んでしまいます。

・・・南部には行ったことないんですけどね。何ででしょう笑

そういや夜たまに聞こえますね。アレはみんなサウスのラップを聴いてたのか

良かったらこちらからチェックしてみてください(該当部分は1:05辺りからです)


はい。ということで、今回の「ラップ名曲パンチラインに学ぶ英語特集」はいかがだったでしょうか?これからも素晴らしきラップミュージックの魅力をお届けすると共に、みなさんの英語学習の助けになれれば光栄です。

第一回から見てみたい!という方は是非こちらからチェックしてみてください。 

cassette 【徹底解説】ラップ名曲パンチラインに学ぶ英語Vol.1

それではまた!