僕がラップミュージックに出会ったのは小学校6年生の時だ。
当時よく行っていた地元のレンタルCDショップで、何を間違えたのか洋楽セクションに迷い込んでしまい、そこで何も分からずたまたま手に取ったCD(The Rootsの“Things Fall Apart”)を借りて家で聞いた時の衝撃は今でも覚えている。
このシリーズでは、約20年間ラップミュージックを聞き続けた僕が自分の大好きな曲の中から、「これは面白い!」と思ったフレーズや、英語の勉強になると思った歌詞を厳選してお届けし、一人でも多くの人にラップミュージックの魅力を知ってもらうと共に、音楽を聞きながら英語を勉強する楽しさを感じてもらえたらと思う。
それじゃ、早速今日のエントリーを見ていこう―――。
ラップ名曲パンチライン
“Your crew is featherweight, my gunshots’ll make you levitate. I’m only 19, but my mind is old”
-Prodigy, “Shook Ones Part ll” (1995)
パンチライン徹底解説
- 黒人英語独特の“th”の発音
- 90年代のNew York
今日のパンチラインはニューヨーク出身のProdigy (R.I.P)とHavocから成るラップデュオ、Mobb Deepの2ndアルバム“The Infamous”に収録されている“Shook Ones Part ll”という曲からの抜粋です。
Mobb Deepの初期の作品の特徴はギラギラと邪悪な雰囲気の漂う重たいビートと生々しく残忍な表現で、それはこのアルバムでもいたるところにちりばめられています。なんてったってアルバムのタイトルが“The Infamous”「悪名高い」ですからね。
今日はそんなイーストコーストのゴリゴリハードコアラップ曲のパンチラインを、
- “Your crew is featherweight”
- “my gunshots’ll make you levitate”
- “I’m only 19, but my mind is old”
の3つのパートに分けて解説していきたいと思います。
それでは早速見ていきましょう。
“Your crew is featherweight”
まずは最初の部分ですが、“featherweight”はボクシングなどの「フェザー級」のことを言います。
“feather”というのは「鳥の羽」のことなので、その名の通りライト級よりもさらに軽く、最軽量のクラスとなります。
ここでは「お前の“crew”「仲間」はフェザー級だ」(=お前らはザコだ)と言っているんですね。
ちなみにこの部分をよーく聴くと(↓の方にYouTubeリンクあります)この“feather”の発音が「ふぇヴぁー」と発音しているように聞こえますが、これは、
<黒人英語独特の“th”の発音>
- “th-fronting”(歯音前進)といって、単語の途中や単語の最後に“th”が来る場合、“th”の部分の発音が、/θ/(無声音)の場合は[f]に、/ð/(有声音)の場合は[v]になる
という黒人英語に見られる発音の特徴の1つです。
(黒人英語の特徴についてはこちらで詳しくまとめているので興味がある人はどうぞ)
関連記事
【完全版】超マニアックな黒人英語の発音や文法の特徴を超まとめ
ここでは“th”の音が“feather” (/ˈfeð.ɚ/)と「有声音(/ð/)」になっているのでその部分が[v]の音に聞こえるんですね。
(ちなみに正しい英語の発音についてはこちらの記事でまとめています)
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“my gunshots’ll make you levitate”
次の部分ですが、“levitate”は「(物理的な力を使わず)宙に浮かせる」という意味の単語です。
なのでここでは「おれの銃から放たれる銃弾でお前を宙に浮かせる」という意味になります。
ちなみにこの“levitate”は1つ前の“featherweight”と韻を踏んでいますし、「鳥の羽が銃弾の風でフワッと舞い上がる」というイメージ的にもピッタリな表現となっていますね。
“I’m only 19, but my mind is old”
そして最後の部分ですが、“I’m only 19”は「おれはたったの19歳だ」でいいですね。
“but my mind is old”は「でもおれの精神はもっと発達している」(=さまざまな経験をしてきた)というニュアンスでいいでしょう。
この“Infamous”というアルバムがリリースされたのは1995年ですが、1980年代後半から1990年代前半のニューヨークというと、コカインが一気に都市に蔓延し(“Crack epidemic”と呼ばれている)中毒者で溢れかえった貧困層が犯罪に手を染めコミュニティを崩壊させていた時代です。
元々Prodigyはクイーンズ地区の“project housing”「公営住宅」(↓のPVで出てくる茶色いレンガ造りの建物。日本で言う公営団地みたいなもの)出身で、青春時代の真っ只中をそのような荒廃した環境で過ごしていれば、自ずと精神面でたくましくなると共に、リアリティのある過激な表現が出てくるのも頷けます。
<90年代のNew York>
- 1980年代前半に登場した“crack”と呼ばれる安価なコカインの結晶が街に蔓延し、貧困層や中毒者による犯罪が横行していた
- 貧困層の多くは“project”と呼ばれる政府管轄の巨大な公営住宅に身を寄せ、マンハッタン地区のハーレムやクイーンズ地区、ブルックリン地区などに大きな“ghetto”「ゲトー」(貧困街)を形成していた
まとめ
ということでここまでの全てのパーツを集めると、
- 「お前の“crew”「仲間」はフェザー級だ」
- 「おれの銃から放たれる銃弾でお前を宙に浮かせる」
- 「おれはたったの19歳だが、おれの精神はもっと発達している」
となります。そしてこれらをまとめつつ少し表現を整えて、
“Your crew is featherweight, my gunshots’ll make you levitate. I’m only 19, but my mind is old”
「おまえらフェザー級のザコはおれの銃弾で吹き飛ばしてやる。おれは19歳だがそれ以上の経験をしてきた」
という感じにしてみました。
なかなか“Infamous”な感じが漂っていますね笑
曲はこちらで聞けるのでよかったらチェックしてみてください(該当部分は1:18辺りからです)
ちなみに、このパンチラインを残したProdigyですが、長らく“sickle-cell anemia”「鎌状赤血球症」という黒人特有の遺伝性の病気と闘っていましたが、残念ながら2017年にこの世を去っています。
また、この“Shook Ones Part ll”のビート、「どこかで聞いたことある気がするなあ」と思った人もおそらくいるんじゃないでしょうか。そんなあなたはなかなかのヒップホップ通ですよ。
実はこの曲、2002年に公開されたエミネム主演の大ヒット映画「8 Mile」の最後のラップバトルでのビートとして使われているんですね。
覚えていますか?”Leaders of the Free World”というギャングのリーダーPapa Docを黙らせたあの最強にかっこいいラップバトルです。
(「8 Mile」を観たことがない人は映画史上とても重要な作品でもあるのでこれを機にチェックしてみましょう)
また、今回紹介したMobb Deepの“Infamous”というアルバムも90年代の東海岸のラップシーンを代表する超名盤なので、これを機にラップに興味を持った人や、僕のように「洋楽を聞きながら楽しく英語を勉強をしたい!」と思った人は是非チェックしてみてくださいね。
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はい。ということで、今回の「ラップ名曲パンチラインに学ぶ英語特集」はいかがだったでしょうか?これからも素晴らしきラップミュージックの魅力をお届けすると共に、あなたの英語学習の助けになれれば光栄です。
前のエピソードや次のエピソードも気になる!という方はそれぞれこちらからどうぞ。
<前のエピソード>
ラップ名曲パンチラインの意味に学ぶ英語vol.19「Twinz編」
<次のエピソード>
ラップ名曲パンチラインの意味に学ぶ英語vol.21「Ol’ Dirty Bastard編」
また、第1回から見てみたい!という方がいましたらこちらからチェックしてみてください。
それではまた!