ラップ名曲パンチラインの意味に学ぶ英語vol.21「Ol’ Dirty Bastard編」

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ラップのリリック(歌詞)は理解するのが難しい。

それはとても早口なのに加え、あちこちにちりばめられたスラングや、自由すぎる文法ルールのせいなのは間違いないけれど、逆に言えばそれはより本能的で脈絡がなく予測が難しい日常会話に似ているとも言える。

僕自身が現在さまざまな国籍の人と英語で会話をする際に、どんなアクセント、どんな語順であったとしても理解するのにさほど苦労しないのは、そんな早口で独特なラップミュージックを20年間聞き続けてきたおかげ、というのもきっと少しはあるだろう。

ということから、このシリーズではすべての英語学習者の役に立ちそうな僕のおすすめの「ユーモア」と「オリジナリティ」に溢れたパンチラインを紹介していこうと思う。

それじゃ、早速今日のエントリーを見ていこう―――。

ラップ名曲パンチライン

“I never been tooken out, I keep MCs looking out. I drop science like girls be dropping babies”

-Ol’ Dirty Bastard, “Brooklyn Zoo” (1995)

パンチライン徹底解説

今日のポイント
  • 黒人英語独特の表現
  • “look out”という表現
  • “drop science”という表現

今日のパンチラインは、Hip Hop界の伝説的最恐軍団「ウータン・クラン」の中でも特に異彩を放っていた「老いぼれ不潔野郎」ことOl’ Dirty Bastard (R.I.P)のソロデビューアルバム“Return to the 36 Chambers: The Dirty Version” (1995)に収録されている“Brooklyn Zoo”という曲からの一節です。

たしかに直訳したら「老いぼれ不潔野郎」ですね笑

ウータン・クランといえばメンバーそれぞれの際立った個性も見どころですが、何と言っても特筆すべきは彼らの独特の言葉遣いや表現方法でしょう。

特にこのOl’ Dirty Bastardの文法は英語教師的観点から言わせてもらうと本当に最悪で、発音も相当クセがあるので最も聞き取りにくいメンバーの一人です笑

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【英語の悪口】ウータン・クランのスラングが最低に下品すぎて最高 ラップ名曲パンチラインの意味に学ぶ英語vol.17「Wu-Tang Clan編」

ウータン・クランの英語スラングについては上の関連記事でもいろいろ紹介していますが、彼らの放送禁止すぎる発言やアクが強すぎる表現はこのアルバムでもいかんなく発揮されていて、今日はその中でも日常的に使えそうな上のラインをピックアップしそれを、

  1. “I never been tooken out”
  2. “I keep MCs looking out”
  3. “I drop science like girls be dropping babies”

の3つのパートに分けて解説していきたいと思います。

それでは早速「ブルックリン動物園」を覗きに行きましょう。

わーい動物園大好きー

“I never been tooken out”

まず最初のパートですが、いきなり「老いぼれ不潔野郎節」が炸裂しています。

“take out”は「打ち負かす/殺す」という意味なので、この部分は学校で習った一般的な文法で正しく表現するとしたら、

“I have never been taken out”

「私は(誰にも)打ち負かされていない」

となるのが自然でしょう。

ですがここでは“have”が省略され、また“taken”“tooken”になっていますね。

私たちは上の“been”“be”の過去分詞形)のような「動詞の過去分詞形」を使う場合は“have”“had”とセットで「現在完了/過去完了形」の形で使うことに慣れていますよね。

実はこの“have”“had”を使わずに動詞の過去分詞形を使って過去の出来事を表すのは、標準英語にはない「黒人英語独特の表現」で、その辺の詳しいことはこちらの記事でまとめているので興味がある人はチェックしてみてください。

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【完全版】超マニアックな黒人英語の発音や文法の特徴を超まとめ

ちなみに、“tooken”という単語も標準英語には存在せず、“take”の過去形“took”と過去分詞形“taken”が合体した、アメリカの南部やその他一部の地域で使われているスラング的な表現と言われています。

CHECK!

<黒人英語独特の表現>

  • ラップのリリックにはこのように標準英語にはない崩れた表現や独特の言い回しがたくさん出て来ますが、それは日常会話においても言えることです。あまり学校で習った「正しい文法の英語」には囚われすぎずに、いろんなタイプの英語を読み聴きし柔軟に対応できるようになると会話力もグンと上がります。

ということでこの部分は「おれは打ち負かされてなどいない」という感じにしておきましょう。

“I keep MCs looking out”

次にポイントとなるのは動詞“keep”を使った表現です。

当コラムでも度々出てきていますが、“keep”は後に動詞をとる場合には必ず「動名詞」(~ing形)にして、「〜し続ける」という意味になる動詞ですね。

これは“keep”自体が「保つ」という意味で、「〜している(ing)状態を保つ」=「〜し続ける」という風になるからです。

そして「誰かに〜させ続ける」のようにそこに「人」が入る場合には、「人」は“keep”“~ing”の間に入れるのがお約束です。

ここでは「人」の部分に”MCs”(=他のラッパー)が入っていますね。

ちなみにここでの“look out”は会話でよく使う表現で、「注意する」や「助ける」という意味のスラングです。

CHECK!

“look out”という表現>

  • “look out”は通常「外を見る」だが、スラングでは「注意する」や「助ける」という意味になる

なのでこのパートは「おれは他のラッパーに注意させ続ける」という意味になるんです。

“I drop science like girls be dropping babies”

最後のパートですが、“I drop science”は直訳すると「私は科学を落とす」になってしまい意味不明ですね。

ですがここでは全く思いも寄らない意味で使われています。

CHECK!

“drop science”という表現>

  • “drop”「発射する/披露する」、“science”「複雑な問題」⇒「難しいスキルや知識」ということから、「難しい知識やスキルを披露する」というニュアンスで会話でしばしば使われるお決まりの表現

また“drop  a baby”というのは「人工妊娠中絶をする」ことを言います。

当時のBrooklynは現在とはだいぶ違い貧困層が暮らすエリアでした。そのため妊娠したものの貧困により簡単に中絶をするケースが後を絶たず、Ol’ Dirty Bastardはそんな状況を皮肉って「女性が赤ちゃんを中絶するくらい簡単におれは難しいスキルを披露する」と表現したんですね。

ちなみにここで使われている“be ~ing”という表現ももう一つの黒人英語独特の表現で、こちらも下の記事で詳しく解説しているのでよかったら覗いてみてください。

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まとめ

ということで、ここまでの全てのパーツをくっつけてみると、

  1. 「おれは打ち負かされてなどいない」
  2. 「おれは他のラッパーに注意させ続ける」
  3. 「女性が赤ちゃんを中絶するくらい簡単におれは難しいスキルを披露する」

となるので、言葉遣いを若干いい感じにアレンジすると、

“I never been tooken out, I keep MCs looking out. I drop science like girls be dropping babies”

「おれはやられてなんかいねぇ、みんなおれにビビりまくりさ。おれはまるでオンナが赤ん坊を中絶するくらい簡単にヤバいスキルをかますぜ」

という感じにしてみました笑

曲はこちらで聞けるのでよかったらチェックしてみてください(該当部分は0:30辺りからです)

どうですか?見た目もラップスタイルもヤバくないですか?笑

ちなみに、この「老いぼれ不潔野郎」ことOl’ Dirty Bastardがヤバいのは見た目だけではく、過去に何度も薬物と警察絡みの「奇行」を取り沙汰されていますが、中でも、

  • 警察からの逃亡中に酒と薬物でフラフラになった状態でウータン・クランのライブに出演
  • 何者かに数発撃たれた数日後にスニーカーの万引きで捕まる(逮捕時十分な金を所持していた)

という逸話は結構有名です笑

なかなかロックンロールな生き方ですね笑

ただ、そんなODBも実はクレイジーな一面だけでなく、自身も苦しんだ薬物と闘う青年たちを援助するなどの慈善活動も行なっていましたが、結局最後は薬物の過剰摂取(“overdose”または“OD”という)により36歳の若さにしてこの世を去っています。

クレイジーだぜ・・笑

というわけで、これを機にOl’ Dirty Bastardやウータン・クラン、またその他ラップに興味を持った人や、僕のように「洋楽を聞きながら楽しく英語を勉強をしたい!」と思った人は是非チェックしてみてくださいね。

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  • 好きな雰囲気の曲があったらそれに似た曲でプレイリストを作成してくれる
  • 友達とプレイリストをシェアできる

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はい。ということで、今回の「ラップ名曲パンチラインに学ぶ英語特集」はいかがだったでしょうか?これからも素晴らしきラップミュージックの魅力をお届けすると共に、あなたの英語学習の助けになれれば光栄です。

前のエピソードや次のエピソードも気になる!という方はそれぞれこちらからどうぞ。

<前のエピソード>

ラップ名曲パンチラインの意味に学ぶ英語vol.20「Mobb Deep編」

<次のエピソード>

(Coming Soon…)

また、第1回から見てみたい!という方がいましたらこちらからチェックしてみてください。 

cassette ラップ名曲パンチラインの意味に学ぶ英語vol.1「元祖ラップ曲編」

それではまた!