【徹底解説】ラップ名曲パンチラインの意味に学ぶ英語vol.15「2Pac編」

僕がラップミュージックに出会ったのは小学校6年生の時だ。

当時よく行っていた地元のレンタルCDショップで、何を間違えたのか洋楽セクションに迷い込んでしまい、そこで何も分からずたまたま手に取ったCD(The Rootsの“Things Fall Apart”)を借りて家で聞いた時の衝撃は今でも覚えている。

このシリーズでは、約20年間ラップミュージックを聞き続けた僕が自分の大好きな曲の中から、「これは面白い!」と思ったフレーズや、英語の勉強になると思った歌詞を厳選してお届けし、一人でも多くの人にラップミュージックの魅力を知ってもらうと共に、音楽を聞きながら英語を勉強する楽しさを感じてもらえたらと思う。

それじゃ、早速今日のエントリーを見ていこう―――。

ラップ名曲パンチライン

Some say the blacker the berry, the sweeter the juice I say the darker the flesh then the deeper the roots

-2Pac, “Keep Ya Head Up” (1993)

パンチライン徹底解説

今日のポイント
  • “the blacker the berry, the sweeter the juice”という表現
  • “the+比較級, the+比較級”という表現

今日のフレーズはニューヨーク出身でその後ロサンゼルスへ移ったラッパー2Pac(Tupac Shakur)(“RIP…”)の2ndアルバム”Strictly 4 My N.I.G.G.A.Z…”に収録されている”Keep Ya Head Up”という曲からの一節です。

2Pacといえばラップミュージックファンでなくても皆知っているほどの人気を誇るラッパーで、1996年にヒップホップの「西海岸vs東海岸抗争」のさなかで銃殺されたあともヒップホップのアイコンとして、また歴代最高のラッパーの一人として愛され続けているアーティストです。

今日は、そんな感情的で時に攻撃的だけど、テクニカルで愛の込もったメッセージが特徴の2Pacのラップを通じて英語の勉強をしていきたいと思います。

それでは早速上のパンチラインを、

  1. Some say the blacker the berry, the sweeter the juice
  2. I say the darker the flesh then the deeper the roots

の2つのパートに分けて見ていきましょう。

Some say the blacker the berry, the sweeter the juice

“some say”の”some”は漠然と「何人かの人」なので、”some say”で「~と言う人もいる」という意味になります

何を言うのかというと“the blacker the berry, the sweeter the juice”です。

この”the blacker the berry, the sweeter the juice”は直訳すると「ベリーは実が黒いほど果実は甘い」ですが、実はこのフレーズは主に黒人コミュニティーでことわざ的に使われている独特の表現です。

CHECK!

“the blacker the berry, the sweeter the juice”という表現>

  • 比喩的な意味①:「黒人は肌が黒いほど人間性に富んでいる」
  • 比喩的な意味②:「黒人女性は肌が黒いほど愛に溢れている」
  • このように一般的な意味と性的な意味があり、とりわけ性的な方は“the older the berry, the sweeter the juice”「熟している(熟女)ほど愛に満ちている」など似たような面白い表現がたくさんあります。

この曲は主に「女性に対するリスペクトと感謝を」歌った曲なんですが、一応ここでは一般的な意味で、「黒人は肌が黒いほど人間性に富んでいる」という感じにしておきます。

I say the darker the flesh then the deeper the roots

ここでは前のラインの”some say”とは対照的に”I say”から始まっています。

「人は~って言うけど自分は~」という風に自分の意見を述べようとしているんですね。

そして”the darker the flesh then the deeper the roots”と続いています。

この部分は前半の“the blacker the berry, the sweeter the juice”という表現に形がとても似ていますね。

実はこれは2Pacが上のフレーズを借りて自分風にアレンジしているんです。

このラインは直訳すると「肉は暗いほど根は深い」となりますが、その意味するところは、「肉体(肌の色)が濃いほどそのバックグラウンドは深い」となり、自分たち黒人のアイデンティティや歴史の奥深さをアピールしているんですね。

ところで、上のフレーズも2Pacオリジナルのフレーズも、同じ”the –er ~,(then) the –er ~”という形になっていますよね。

これは日本の英語の授業でも必ず習う、形容詞や副詞の「比較級」を使った重要な構文です。

CHECK!

“the+比較級, the+比較級”という表現>

  • 「~するほど、~である」という意味で、「比較級」の部分には別々の単語が入ったり同じ単語が入る場合もある。
  • 比較級とは形容詞や副詞に”-er”を付けた形だが、多くの場合3音節以上の単語は”-er”は付けずに”more+原形”となる。(例:”beautifuler”→✕ ”more beautiful”→◯)
  • 比較級の後には今回のように単語のみが来る場合もあれば、”S+V”などの「節」が入る場合もある。

これは言葉で一生懸命説明するよりも例を見た方が圧倒的にわかりやすいと思うのでいくつか例文を紹介します。

<例>

同じ比較級が入る場合

“The bigger the house, the bigger the furniture”

(家がデカいほど家具もデカい)

 

”more+原形”の比較級の場合

“The more complicated the theme, the more interesting the book”

(テーマが複雑なほど、本は興味深い)

 

※比較級の後に「節」が来る場合

“The stronger I insisted, the more difficult the situation became

(強く主張すればするほど、状況は難しくなった)

これは日常会話や英語の新聞や本などでもたびたび出てくる表現なので是非覚えておきましょう。自分で使うのは難しくても、「こういうものか」とわかっておけば、いざ出てきた時に簡単に理解することができますよ。

まとめ

ということで、2つのパートをまとめてみると、

  1. 「黒人は肌が黒いほど人間性に富んでいる」
  2. 「肉体(肌の色)が濃いほどそのバックグラウンドは深い」

となるので、

Some say the blacker the berry, the sweeter the juice I say the darker the flesh then the deeper the roots

 

「肌が黒いほど人間性に富んでいるって言うけど、色が黒いほどそのルーツは奥深いんだ」

という風に訳してみました。

なるほど・・・もちろんこれは科学的には証明しようもないことですが、「黒人のルーツ」というのは個人的には非常に興味深いトピックです。ここでは2Pacは「おれたち黒人の歴史は偉大なんだぜ」というメッセージをユニークな角度から投げかけていてとても面白いパンチラインだと思います。

ちなみに2Pacがこのようなメッセージを残した背景として、

  • 黒人は(主に白人から)何百年もの間激しい差別を受けていた
  • 当時のLAでは警察官による黒人への暴力が横行していた(1992年(この曲の前年)のロサンゼルス暴動の一因でもある)
  • 当時から黒人同士の妬み合いや殺し合いが頻発していた
  • 2Pac自身、1960年代以降の黒人の市民権運動や地位向上活動に対する理解が広い
  • 両親がブラックパンサー党(黒人の人権を主張する極左団体)と強い結びつきがあった

などが挙げられると思います。

2Pacは上のメッセージを通じて世の中に蔓延する人種間や人種内でのヘイト“hate”に対して、「おれたち黒人と黒人女性のアイデンティティに目を向けてくれ」とリスペクト”respect”を促しているんですね。

めちゃくちゃかっこいいです。

しかし、そんな2Pacも結局は「ヒップホップの東西抗争」の中で1996年にラスベガスで「黒人ギャング」の手によって銃殺されてしまったのも、これまた皮肉な話ですね。

それでもとにかくストレートで感情をあらわにした2Pacのラップスタイルは彼の死後も愛され続け、その死から20年以上たった今でも(そしてこれからも)ラップミュージック史上最も偉大なラッパーの一人でありつづける2Pacは間違いなく僕のお気に入りラッパーでもあります笑

彼はこの世を去った後も(主に母親のAfeni Shakurによって)たくさんの未発表音源をリリースしていて、そのリリックにはたくさんの素晴らしいメッセージが残されているので、このシリーズでもまた取り上げていこうと思います。

ということで今日は2Pacのパンチラインから日常で役立つ英語を学んでみました。

曲はこちらで聞けるのでよかったらチェックしてみてください(該当部分は0:15辺りからです)

ちなみに、この“Strictly 4 My N.I.G.G.A.Z…”というアルバムは、2Pacの2枚目アルバムにして2Pacを一躍ヒップホップ界の大スターにした傑作です。これを機にラップに興味を持った人や、僕のように「洋楽を聞きながら楽しく英語を勉強をしたい!」と思った人は彼の音楽もチェックしてみてくださいね。

また2PacBiggie (The Notorious B.I.G)の死の原因ともなった「ヒップホップの東西抗争」とは一体どんなものだったのか、気になる人は是非こちらもチェックしてみてください。


はい。ということで、今回の「ラップ名曲パンチラインに学ぶ英語特集」はいかがだったでしょうか?これからも素晴らしきラップミュージックの魅力をお届けすると共に、あなたの英語学習の助けになれれば光栄です。

前のエピソードや次のエピソードも気になる!という方はそれぞれこちらからどうぞ。

<前のエピソード>

【徹底解説】ラップ名曲パンチラインの意味に学ぶ英語vol.14「KRS-One編」

<次のエピソード>

【徹底解説】ラップ名曲パンチラインの意味に学ぶ英語vol.16「Scarface編」

また、第1回から見てみたい!という方がいましたらこちらからチェックしてみてください。 

cassette 【徹底解説】ラップ名曲パンチラインの意味に学ぶ英語vol.1

それではまた!